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国民年金の仕組み8_老齢基礎年金<振替加算>

振替加算は国民年金版の家族手当

旧国民年金法(以下、旧法)では、老齢年金は個人単位ではなく夫婦単位という考え方で制度設計されていました。
旧法が施行されたのは昭和36年4月ですが、現在と違って当時は「夫が働き妻は専業主婦」という夫婦形態が多く、さらに旧法時代は、新国民年金法(以下、新法)の第3号被保険者(被用者年金被保険者の配偶者)が国民年金に任意加入だったこともあり、国民年金に加入しない妻も多く、妻自身の年金額が夫と比べて相対的に低水準でした。
そんな時代背景もあり、老齢厚生年金には加給年金なる家族手当の制度が設定されています。
振替加算は国民年金版の家族手当ですが、制度の性格上両者には関連性があり、両者はセットで理解する必要があります。
なお、加給年金の詳細は厚生年金の回に詳しく説明しますので、今回は軽い説明にとどめます。

老齢厚生年金の加給年金(概要)

加給年金とは、厚生年金の受給権者に一定の要件を満たす被扶養者(配偶者または子)がある場合に、厚生年金の受給権者に対して支給される付加金のことを言います。
出典:日本年金機構 加給年金と振替加算

加給年金の受給権者

・老齢厚生年金の受給権者(※)で一定の被扶養者がある者
・厚生年金の被保険者期間が20年(240月)以上ある者
(※)特別支給の老齢厚生年金(定額部分)および65歳からの原則支給の老齢厚生年金が支給される者

一定の被扶養者者の要件

・配偶者→65歳未満の配偶者で受給権者に生計を維持される者
・子→18歳の年度末までの子で受給権者に生計を維持される者
・子→20歳未満の障害等級1級または2級に該当する子で受給権者に生計を維持される者

加給年金額

・配偶者 224,700円/年 × 改定率
・子(第1子、第2子) 224,700円/年 × 改定率
・子(第3子以降) 74,900円/年 × 改定率

配偶者への加給年金の停止事由

・被扶養配偶者が65際に達したとき(配偶者自身が老齢年金を受給できる時)
・被扶養配偶者が老齢厚生年金の支給を受ける時(被保険者期間が20年(240月)以上あること)
※年金額の少ない妻への生活支援の表れとして設けられた停止事由です。
・被扶養配偶者が障害年金(障害厚生年金、障害基礎年金)の支給を受ける時

つまり加給年金とは、夫が厚生年金を受給できるようになった時(原則65歳到達時)に、
65歳未満の(年下の)被扶養配偶者(および子)がいれば、被扶養配偶者が一定年齢に達するまで支給される
家族手当と考えれば、理解しやすいと思います。

老齢基礎年金の振替加算(概要)

厚生年金の加給年金では、被扶養配偶者が65歳となり自分の年金を受給できるようになると支給が停止されます。
そこで旧法時代の制度設計上、妻の年金額が相対的に低水準くなりがちであることへの対応措置として、
夫に支給停止となった加給年金の一定割合を、妻の老齢基礎年金に「振替加算」として支給することとなりました。

振替加算の受給権者

・老齢基礎年金の受給権者(大正15年4月2日から昭和41年4月1日生まれに限る)である者
・65歳に達した日に一定の配偶者(※)に生計を維持されている者
・65歳に達した日の前日において夫に支給されていた加給年金の計算の基礎になっていた者

一定の配偶者の要件

・老齢厚生年金(被保険者期間20年以上)に対する加給年金の受給資格者
・障害厚生年金(障害等級1級または2級)に対する加給年金の受給資格者
なお、夫が加給年金の受給資格を得ていることが振替加算支給の前提条件ですが、実際に受給していることは
要件ではありません。
つまり、夫が65歳以上で収入があり、在職老齢年金制度により加給年金が支給停止されていたとしても、
妻が65歳に達した段階で妻に振替加算の受給権が発生します。

振替加算額

振替加算額は、前述の支給要件を満たした老齢基礎年金の受給権者に対して以下のとおり支給されます。
224,700円 × 改定率 × 生年月日に応じた率
実際には振替加算の受給権者ご本人の生年月日ごとに支給額が決まっており、年齢が若くなるにつれて金額が少なくなります。

ご本人の生年月日 政令で定める率 年額(円)
(令和1年度)
月額(円)
(令和1年度)
昭和2年4月1日まで 1.000 224,500 18,708
昭和2年4月2日~昭和3年4月1日 0.973 218,439 18,203
昭和3年4月2日~昭和4年4月1日 0.947 212,602 17,716
昭和4年4月2日~昭和5年4月1日 0.920 206,540 17,211
昭和5年4月2日~昭和6年4月1日 0.893 200,479 16,706
昭和6年4月2日~昭和7年4月1日 0.867 194,642 16,220
昭和7年4月2日~昭和8年4月1日 0.840 188,580 15,715
昭和8年4月2日~昭和9年4月1日 0.813 182,519 15,209
昭和9年4月2日~昭和10年4月1日 0.787 176,682 14,723
昭和10年4月2日~昭和11年4月1日 0.760 170,620 14,218
昭和11年4月2日~昭和12年4月1日 0.733 164,559 13,713
昭和12年4月2日~昭和13年4月1日 0.707 158,722 13,226
昭和13年4月2日~昭和14年4月1日 0.680 152,660 12,721
昭和14年4月2日~昭和15年4月1日 0.653 146,599 12,216
昭和15年4月2日~昭和16年4月1日 0.627 140,762 11,730
昭和16年4月2日~昭和17年4月1日 0.600 134,700 11,225
昭和17年4月2日~昭和18年4月1日 0.573 128,639 10,719
昭和18年4月2日~昭和19年4月1日 0.547 122,802 10,233
昭和19年4月2日~昭和20年4月1日 0.520 116,740 9,728
昭和20年4月2日~昭和21年4月1日 0.493 110,679 9,223
昭和21年4月2日~昭和22年4月1日 0.467 104,842 8,736
昭和22年4月2日~昭和23年4月1日 0.440 98,780 8,231
昭和23年4月2日~昭和24年4月1日 0.413 92,719 7,726
昭和24年4月2日~昭和25年4月1日 0.387 86,882 7,240
昭和25年4月2日~昭和26年4月1日 0.360 80,820 6,735
昭和26年4月2日~昭和27年4月1日 0.333 74,759 6,229
昭和27年4月2日~昭和28年4月1日 0.307 68,922 5,743
昭和28年4月2日~昭和29年4月1日 0.280 62,860 5,238
昭和29年4月2日~昭和30年4月1日 0.253 56,799 4,733
昭和30年4月2日~昭和31年4月1日 0.227 50,962 4,246
昭和31年4月2日~昭和32年4月1日 0.200 44,900 3,741
昭和32年4月2日~昭和33年4月1日 0.173 38,839 3,236
昭和33年4月2日~昭和34年4月1日 0.147 33,002 2,750
昭和34年4月2日~昭和35年4月1日 0.120 26,940 2,245
昭和35年4月2日~昭和36年4月1日 0.093 20,879 1,739
昭和36年4月2日~昭和37年4月1日 0.067 15,042 1,253
昭和37年4月2日~昭和38年4月1日 0.067 15,042 1,253
昭和38年4月2日~昭和39年4月1日 0.067 15,042 1,253
昭和39年4月2日~昭和40年4月1日 0.067 15,042 1,253
昭和40年4月2日~昭和41年4月1日 0.067 15,042 1,253
昭和41年4月2日~

 振替加算の時期

振替加算は、支給対象者に対し老齢基礎年金を支給される段階で、夫に支給されていた加給年金が振替わり支給されますが、
加給年金を支給される夫と、振替加算が支給される妻の年齢関係によって、以下のとおり支給時期が異なります。
夫が(加給年金の受給者)が年下の場合、夫に加給年金は支給されませんが、妻には振替加算が支給されます。
このケースでは、振替加算(夫の加給年金申請手続き)がうっかり忘れてしまうことがありますから、気を付けてください。
年下夫で加給年金は関係ないと思っても、振替加算のためには加給年金の手続きが前提となります、ご注意を!

受給権者の老齢年金繰上げ・繰下げとの関係

受給権者の妻が、65歳からの老齢基礎年金の受給を①繰上げ、②繰下げ、した場合は、振替加算に影響がおよびます。

繰上げした場合

繰上げにより妻が65歳前に老齢基礎年金の受給が始まったとしても、振替加算は繰上がらず、原則通り65歳になって
初めて支給が始まります
振替加算は繰上がらないため、減額調整もありません。

繰下げした場合

繰下げにより65歳語後に老齢基礎年金の支給が始まった場合は、振替加算も連動して繰下がります
ただし、繰下がったにも関わらず振替加算は増額調整されません。

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