「給付に不平等、おかしい」遺族補償年金めぐり、遺族の男性が提訴

労災保険の遺族補償年金において、男性にのみ年齢要件が課されるのは憲法違反だとして、岩手県の男性(59)が国を相手に仙台地裁へ提訴した。男性の妻は2020年に勤務先でのストレスによりうつ病を発症し自死。男性は当時54歳で、大学生・高校生・中学生の3人の子どもを抱えていたが、年齢要件により本人には年金が支給されず、未成年の子への給付と一時金で約600万円にとどまった。妻を亡くした夫は55歳未満だと支給対象外である一方、夫を亡くした妻には年齢要件がなく、仮に原告が女性であれば受給額は約2千万円と試算される。弁護団は性別による不平等と主張し、東京地裁でも同様の訴訟が起こされており、今後さらに訴訟が続く見通し。

(出典)朝日新聞デジタル2025年7月31日記事

この問題の背景は、戦後の社会において「家計を支えるのは男性、家事や育児を担うのは女性」という性別役割分業の考え方が根底にあったため、このような要件の差が設けられていたことにあります。しかし、共働き世帯の増加や女性の社会進出が進んだ現代社会では、実態に合わないものとなり、不平等な規定として認識されるようになりました。
厚労省によると、配偶者間で男女差のある年齢要件は、労災補償年金制度が創設された1965年以来、変更されていません。当時は夫と死別した女性による生計維持は困難との考えが背景にあったためです。
さすがに今の時代には合わない不合理な逆性差別であるため、厚生労働省では来年以降、差を解消する法改正を検討しています。