第5条 (強制労働の禁止)
1 使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。
この条文は、会社やお店などの使用者(雇用主)は、どんな理由があっても、労働者の自由を奪って無理やり働かせてはならない、ということを定めています。具体的には、以下のような行為が禁じられています。
- 暴行・脅迫: 暴力を使ったり、「言うことを聞かなければ危害を加えるぞ」と脅したりして、無理やり働かせること。
- 監禁: 閉じ込めたり、外に出られないようにしたりして、物理的に移動の自由を奪い、労働を強制すること。
- その他精神または身体の自由を不当に拘束する手段:
- 借金を盾に、その返済のために強制的に働かせる(いわゆる「人質労働」や「前借金相殺の強制」)。
- パスポートや在留カードを取り上げて、帰国させない、あるいは逃げられないようにして働かせる。
- 家族に危害を加えるなどと脅して働かせる。
- 精神的な圧力をかけ続け、辞めたくても辞められない状況を作り出して働かせる(例えば、過度な叱責や人格否定により精神的に追い詰めるなど)。
この規定は、戦前の日本の労働環境、特に炭鉱や工場などで労働者が不当な方法で働かされていた歴史的背景を踏まえて作られました。労働者を物のように扱い、奴隷のように働かせることを、法律で明確に禁止することで、労働者の基本的な人権と尊厳を守ることを目的としています。