最低賃金法解説 

ここ十年余り、毎年のように最低賃金が大幅に上昇し、経営にかかる人件費アップに頭を悩ませている中小企業の事業主も多い事と思います。最低賃金法は、労働基準法第28条に基づき、労働者の労働条件の最たるものである「賃金」について定めるものです。そもそも賃金は、労使間で結ばれる労働契約において双方の合意に基づいて合意形成されたものが有効とされるのが本来あるべき姿ですが、そもそも労使間の力関係には格差があることから、しばしば使用者側に有利な条件で結ばれることが容易に想定され、不当に不利な(安価な)賃金での労務提供になることを避け労働者の生活の安定の資することを目的として、最低賃金という形で賃金の最低条件を定めたものです。

最低賃金法の構成と概要

第1章:総則(第1条~第2条) 
 第1章は、法律の土台となる部分です。「最低賃金以下は無効」という強力な効力が定められています。

第2章:最低賃金(第3条~第19条) 
 第2章では、具体的な最低賃金額を定めています。
 ・強行規定(第4条): たとえ労使が合意していても、最低賃金以下の契約は法律で強制的に最低賃金まで引き上げられます。
 ・算入の範囲(第4条3項): 残業代、賞与、通勤手当、家族手当などは、最低賃金の計算には含められません。
 ・周知義務(第8条): 事業主は、最低賃金額を常時見やすい場所に掲示するなどして、従業員に知らせる義務があります。
 ・地域別最低賃金(第9条): 都道府県ごとに、生計費、賃金、企業の支払能力を考慮して決定されます。
 ・特定(産業別)最低賃金(第15条): 特定の産業について、労使の申し出に基づき、地域別よりも高い水準で設定されます。
 ・派遣労働者への適用(第13条・第18条): 派遣元ではなく、「派遣先の事業場」がある地域の最低賃金が適用されることが明記されています。

第3章:最低賃金審議会(第20条~第26条) 
第4章:雑則(第27条~第38条)
第5章:罰則(第39条~第42条)  
 第3章から第5章では、ルールを形骸化させないための組織や罰則について定めています。
 ・罰則(第39条~第42条): 地域別最低賃金に違反した場合、50万円以下の罰金が課される可能性があります。
 ・最低賃金審議会(第20条): 労働者代表・使用者代表・公益代表の3者構成で議論されます。
 ・監督・立入検査(第31条・第32条): 労働基準監督官による事業場への立ち入りや、帳簿の検査権限が定められています。


なお、本社(本店)と事業所(支店・工場など)が異なる都道府県にある場合、実務上もっとも注意すべき点は「どこの最低賃金が適用されるか」です。
→ 結論から言うと、「労働者が実際に働いている場所(事業場)」の最低賃金が適用されます。
つまり、本社がどこであろうと、実際に働いている事業所の所在地である都道府県の最低賃金が適用されます。よって、都道府県が異なる事業所を持つ会社においては、それぞれの事業所ごとに異なる最低賃金が適用になります。