障害年金 ~社会的治癒~

社会的治癒という考え方は、医学的な概念ではなく、障害年金制度場の概念であることにまず注意が必要です。
厚生労働省は社会的治癒に関して、以下の通り規定しています。

社会的治癒とは、医療行為を行う必要がなくなって社会復帰していることをいう。ただし、一般社会における労働に従事している場合でも薬事下又は療養所内にいるときは社会的治癒とは認められない。起因する疾病があっても社会的治癒が認められる場合は、その後に初めて医師の診療を受けた日を初診日とする。

つまり社会的治癒とは、その疾病が医学的な治癒に至っていなくても、自覚的・他覚的に疾病に異常が認められず、社会復帰し、かつ、投薬治療も行われず診療も受けず、一定期間継続的に普通の生活や就労をしている場合(※1)は、社会的治癒があったものとして、同じ疾病で再発した場合の再発時の初診日を、障害年金申請の初診日として取り扱うものを認める制度です。

通常障害年金では、同一疾病の初診日は、一番最初に診療を受けた日であり、転医した際のそれぞれの診療所の初診日から任意に自分で選択することはできません。しかし、社会的治癒はその例外として扱われ、同一疾病であっても社会的治癒が認められた場合は、再発時の初診日を採用することが認められます。

社会的治癒の判断基準としては、次のいずれにも該当することが必要とされ、必ずしも医学的な治癒は必要としません。
・症状が固定し、医療を行う必要がなくなったとき
・長期間(精神疾患で精神疾患の場合概ね5年程度以上の期間、疾病によっては10年程度)にわたり、自覚的にも他覚的にも病変や異常が認められないこと
・一定期間、普通に生活または就労していること

社会的治癒の意義は、初診日の証明ができず障害年金を申請することが出来ない者の救済措置として意義があります。つまり初診日を証明できず、障害年金の申請を断念した場合でも、社会的治癒に該当すると認められれば、再発時の初診日を採用することができるため、申請できる可能性が復活するためです。
ただし、社会的治癒が認められるためには審査があるため、形式上の条件が揃っていても実態が伴っていない場合は認められないことに注意が必要です。

※1 一定期間とは、精神疾患の場合概ね5年程度以上の期間、疾病によっては10年程度となる場合もあります。