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国民年金の仕組み9_老齢基礎年金<繰上げ請求>

老齢基礎年金の支給繰上げ

国民年金の老齢基礎年金は、65歳から支給されるのが原則です。
しかし、個人の事情により、それより早く(繰上げ)受給したい方、遅く(繰下げ)受給したい方、それぞれ要望があると思います。
そこで、
そのような要望に応えるため老齢基礎年金には繰上げ・繰下げ支給の制度が用意されています。

老齢基礎年金の繰上げ支給の概要

本人の申し出により、本来65歳から支給される老齢基礎年金を、60歳から65歳になるまでの間に繰上げて受給する制度です。

繰上げ受給権者
・請求日の前日において、受給資格期間10年(※)を満たす者
・60歳以上、65歳未満の者
(※)保険料納付済み期間、保険料免除期間の合計(学生特例、納付猶予期間は含まない)

繰上げ支給の注意点
・老齢基礎年金の繰上げ請求を行うと、老齢厚生年金(特別支給又は原則支給)の繰上げ請求も行うことなる。
・一度繰上げ請求を行うと、以後取り消すことはできない。
・繰上げ請求後は、国民年金に任意加入することはできない。
・任意加入被保険者は、繰上げ請求することができない。
・繰上げ請求後は、過去の保険料の追納ができない。
・老齢厚生年金に加給年金が支給される場合でも、加給年金は繰上げされず65歳から支給される。
・老齢基礎年金に振替加算が支給される場合でも、振替加算は繰上げされず65歳から支給される。

他の年金との調整
①障害基礎年金との調整
・繰上げ請求をした後に障害の程度が重くなり、障害等級に該当しても、障害基礎年金は受給できません。
(事後重症による障害基礎年金は支給されない)

②寡婦年金との調整
・繰上げ請求をした後は、寡婦年金(※)の受給権を失います。
(※)夫が老齢基礎年金を受給する前に死亡した場合、一定の条件に該当する妻に支給される年金。

③遺族厚生年金との調整
・65歳前は、繰上げ支給の老齢基礎年金と遺族厚生年金の併給はできず、どちらか一方を選択しなければなりません。

繰上げに伴う年金額の減額調整

年金の繰上げ請求を行うと、その繰上げした月数に応じて一定の減率を乗じて減額された年金額が支給される。
一度繰上げ支給を行うと、その減率を乗じた年金額で生涯変わらず支給されることになる。

減額率 = 0.5% × 繰上げ請求した日の属する月から65歳に達する日の属する月の前月までの合計月数

 

請求時の年齢 0月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月
60歳 30.0 29.5 29.0 28.5 28.0 27.5 27.0 26.5 26.0 25.5 25.0 24.5
61歳 24.0 23.5 23.0 22.5 22.0 21.5 21.0 20.5 20.0 19.5 19.0 18.5
62歳 18.0 17.5 17.0 16.5 16.0 15.5 15.0 14.5 14.0 13.5 13.0 12.5
63歳 12.0 11.5 11.0 10.5 10.0 9.5 9.0 8.5 8.0 7.5 7.0 6.5
64歳 6.0 5.5 5.0 4.5 4.0 3.5 3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5

特別支給の厚生老齢年金(以下、特老厚)の段階的支給開始年齢の繰下げと繰上げパターン

特老厚の支給開始年齢繰り下げは、2001年(平成13年)から始まり、男性は2025年、女性は2030年に65歳支給への繰り下げが完了します。

上記のように、現在、生年月日に応じて特老厚の支給開始年齢の引き下げが行われています。
よって次のとおりパターンごとに、繰上げ請求の形態を確認します。
ターン① 特老厚のうち定額部分は繰下げ完了、報酬比例部分は60歳支給開始
このパターンでは、老齢基礎年金のみが繰上げの対象となります。繰上げに伴う減額率は、65歳を起点に繰上げ月数により
上表のとおりです。
(例)60歳時到達時に繰上げ請求した場合
・報酬比例部分 減額調整なし
・老齢基礎年金 65歳を起点として5年(60か月)繰上げにより30%の減額率が適用

パターン② 特老厚のうち定額部分は繰下げ完了、報酬比例部分は繰下げ措置中
このパターンでは、老齢基礎年金のほか、報酬比例部分の支給開始年齢到達前であれば報酬比例部分も合わせて繰上げ請求する
ことになりますが、繰上げ起点が両者で違うため両者の減額率は異なります。
なお、報酬比例部分の支給開始年齢到達後であれば、老齢基礎年金のみの繰上げとなります。
(例)60歳時到達時に繰上げ請求した場合
・老齢基礎年金 65歳を起点として5年(60か月)繰上げにより30%の減額率が適用
・報酬比例部分 62歳を起点として2年(24か月)繰上げにより12%の減額率が適用

パターン③ 特老厚のうち定額部分、報酬比例部分とも繰下げ完了
このパターンでは、老齢基礎年金の繰上げと同時に老齢厚生年金も繰上げ請求することになります。
繰上げ起点が両者で一致するため両者の減額率は同じになります。
(例)60歳時到達時に繰上げ請求した場合
・老齢基礎年金 65歳を起点として5年(60か月)繰上げにより30%の減額率が適用
・老齢厚生年金 65歳を起点として5年(60か月)繰上げにより30%の減額率が適用

参考 特老厚のうち定額部分の繰り下げ措置中
2019年11月現在、このパターンに該当する男性は70歳以上、女性も65歳以上で、既に繰上げ可能な時期を過ぎており
今後このパターンが発生することはありません。
このパターンでは、老齢基礎年金の繰上げのみが対象という点ではパターン①と同じなのですが、特老厚の定額部分の支給が
残っており、制度をややこしくしていました。
全部繰上げと一部繰上げの制度がありましたが、複雑すぎるため説明は割愛します。
出典:日本年金機構 老齢基礎年金の繰上げ受給

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