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精神障害の労災認定について

厚生労働省の「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」から、検討結果の報告書が公表されました。
まだ皆さんの記憶にも新しいと思いますが、パワハラ防止法が2020年6月から(中小企業でも2022年4月から)施行され、すべての事業主に対して、パワハラ防止のための雇用管理上の措置が義務付けされました。
具体的には、あらゆるハラスメントを防止するために事業主が取るべき対策と方針を定め、それを職員に周知するとともに、いざハラスメントが発生した場合には適切に事後処理対応を取ることが義務となりました。

法律施行によって、ハラスメント(主にパワーハラスメント)を防ぐ対策は義務化されましたが、実際にはハラスメントを原因とする労災件数は増加の一途をたどっています。
労災

※出展(厚生労働省:令和3年度「過労死等の労災補償状況」を公表します

残念ながらハラスメント(主にパワーハラスメント)により精神疾患にかかり、それが原因で仕事ができなくなってしまう事例を、私自身もたくさん見聞きしてきました。ハラスメントが原因で発症した精神障害を労災と認めるための基準は、平成23年(2011年)に認定基準が定められましたが、近年の社会情勢を踏まえてこのほど認定基準が改定されました。

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出展:精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会報告書 

 

特に注目したいのは、「精神障害の悪化の業務起因性が認められる範囲を見直し」についてです。
※業務起因性が認められなければ、労災と認定されないため重要な判断材料です。

(現行)
悪化前おおむね6か月以内に「特別な出来事」(特に強い心理的負荷となる出来事)がなければ業務起因性を認めていない
(見直し後)
悪化前おおむね6か月以内に「特別な出来事」がない場合でも、「業務による強い心理的負荷」により悪化したときには、悪化した部分について業務起因性を認める

見直しによれば、今までは、ハラスメントに該当する「特別な出来事」が必要でした、つまり、ハラスメントに該当するような直接的な他からの言動が必要でしたが、見直しにより「業務による強い心理的負荷」であっても認められるようになります。過重労働による心理的負荷や過大な責任による心理的負荷などが原因の場合でも、労災に認められる可能性が高まったということです。

病気にかかり辛いことに変わりはありませんが、労災と認められれば、公的な労災保険制度に基づき経済的な不安が多少でも軽減されると思います。
もし心当たりがあるようであれば、一人で悩むのではなく、周りや専門家に相談してください。

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