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障害年金の基礎知識③ 〜前駆症状と相当因果関係〜

前駆症状と初診日

前駆症状とは、傷病の発生する前触れのようにして起こる症状のことをいいます。現実には、後になって振り返った時にわかることですが、例えば、結果的に精神疾患の診断がついた場合であって、まだその診断が無い段階だとしても、体調不良で病院にかかり精神科とは違う診療科目の診療を受けたケースなどでも、その体調不良が精神疾患の前駆症状だと判断された場合は、その前駆症状での初診日が障害年金(この場合は精神障害)の初診日となります。

相当因果関係とは

起因する疾病とは、当該前の疾病や負傷が無ければ、後の疾病は起こらなかったであろうと認められる場合に、それを「相当因果関係あり」とみて、前後の傷病を同一の傷病と扱います。なお、通常は後の疾病には負傷は含まれません。(負傷は前後で因果関係は、普通は考えられません)

つまり、相当因果関係がある場合は、前後の傷病はひとつの傷病として見られることになり、相当因果関係が認められない場合は、前の傷病と後の傷病はそれぞれ別の傷病として扱われます。初診日の確認においても、前駆症状での初診となった傷病に後の傷病との相当因果関係が認められれば、前駆症状で初めて医師の診療を受けた日が初診日となることは、前述のとおりです。

「相当因果関係あり」と扱われることが多い事例

①糖尿病と糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性動脈閉塞症は、相当因果関係ありと扱われる
②糸球体腎炎(ネフローゼ含む)、多発性のう胞腎、慢性腎炎にり患し、その後慢性腎不全を生じたものは、前後の期間が長いものであっても相当因果関係ありとして扱われる
③肝炎と肝硬変は、相当因果関係ありと扱われる
④結核の化学療法による副作用として聴力障害を生じた場合は、相当因果関係ありと扱われる
⑤手術等による輸血により肝炎を併発した場合は、相当因果関係ありと扱われる
⑥ステロイドの投薬による副作用で大腿骨頭無腐性壊死が生じたことが明らかな場合は、相当因果関係ありと扱われる
⑦事故または脳血管疾患による精神障害がある場合は、相当因果関係ありと扱われる
⑧肺疾患にり患して手術を行い、その後呼吸不全を生じたものは、肺手術と呼吸不全発生までの期間が長いものであっても相当因果関係ありとして扱われる
⑨転移性悪性新生物(一般には「がん」)は、原発とされるものと組織上一致するか否かを診断し、転移であることを確認できたものは、前後の期間が長いものであっても相当因果関係ありとして扱われる

がんの場合の初診日の特定

相当因果関係⑨で提示されるとおり、がんについては、原発と後発(転移)が組織上一致するものと診断された場合は、相当因果関係ありとされ、前後の傷病はひとつの傷病とみられることになります。つまり、原発のがん発病時にはじめて診療を受けた日が初診日となることになります。

結果としてがんの場合、原発か転移か(後発)かの確認をしなければ、初診日の特定ができないということになります。

原発性のがんの場合、他の部位のがんとの因果関係は認められず、転移性のがんの場合、他の部位のがんとの因果関係が認められる可能性が大きくなります。他の部位からの転移に相当因果関係は認められた場合は、当該初診日は他の部位のがんの初診日を証明することが必要となり、場合により初診日を証明する「受診状況等証明書」を添付することが必要となります。

「相当因果関係なし」と扱われることが多い事例

①高血圧と脳出血、脳梗塞は、相当因果関係なしと扱われる
 →医学的には、高血圧と脳出血には因果関係があるが、障害認定基準における因果関係はなしと扱われます。
②近視と黄斑部変症、網膜剥離、神経性委縮は、相当因果関係なしと扱われる
③ポリオとポリオ後症候群(ポストポリオ)については、ポリオにり患しなければポストポリオは発症しない点で相当因果関係にあるが、一定の状態で経緯した場合は、別傷病で、相当因果関係なしと扱われる
(平成18年2月17日 社保庁発 ポリオ後症候群に係る障害認定について)
④糖尿病と脳出血、脳梗塞は、相当因果関係なしと扱われる

~その④に続く~

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