ブログ
10.152019
相続の手引き10_「相続放棄」と「相続分の放棄」の違いについて
目 次
相続放棄の問題点
相続放棄のお話は、前回のブログ(相続の手引き9_相続の単純承認・限定承認・相続放棄)で触れました。
相続放棄には、①相続が開始したことを知って3か月以内に、②家庭裁判所に相続放棄の申述をすることにより、
その相続に関しては初めから相続人ではなかったとみなされ一切の権利義務から免れる、という法律効果がありました。
相続放棄は、法定された手続きにより行われることで法律効果が生じますが、ポイントは「一切の権利義務から免れる」という点です。
相続人の財産を選り好みして、一部だけ相続したり放棄したりすることはできません。
また、うっかりして相続開始から3か月以内(熟慮期間)に相続放棄ができなかった時は、法定単純承認したとみなされ、
もはや相続放棄することはできなせん。
相続の熟慮期間が3か月では足りない場合
相続の熟慮期間は、相続開始のあったことを知ってから3か月以内と法定されています。
相続を単純承認するか、それとも相続放棄するかは、原則として3か月以内に決めなければなりませんが、
短いと思いませんか?
相続財産はほとんどないと思っていても、それはプラス財産のことで、もしかするとマイナス財産があるかもしれません。
特に連帯保証債務などは、債務者が不履行になって初めて表面化する性質の債務です、調査は困難なことも多いのです。
調査に時間がかかり、熟慮期間3か月では足りない場合は、どいすれば良いかご存知でしょうか?
そんな時のために、熟慮期間の伸長の制度が置かれています。
家庭裁判所に対して、「相続の承認又は放棄の期間の伸長」の申立てを行うことにより、期間を伸ばすことができます。
ご参考まで。
なお、この申立ては熟慮期間の終了前にする必要があり、必ず伸長が認められるわけでもありませんから注意してください。
相続分の放棄とは
相続放棄と似て非なるものに、相続分の放棄があります。
「相続分の放棄」とは、相続が開始して遺産分割するまでの間に、自分の相続分を放棄する行為のことをいいます。
「相続放棄」のように法定された行為ではありませんから、期間などの制約はありません。
相続人間で遺産分割をする前であれば、いつでもすることができます。
注意点としては、以下のとおりです。
①プラス財産しか相続分の放棄をすることはできない
②マイナス財産の負担部分(相続分)は免れない(債務は放棄できない)
③相続分のうち一部だけを放棄することもできる
どんな場面が想定されるかですが、
例えば、思わない形で相続人となったものの、相続財産の中に望まない財産があるようなケースや、
遺産分割でもめるのが嫌なので、もめそうにない財産だけ相続して残りは放棄するようなケースなどが考えられます。
相続分の放棄は実務上では、遺産分割の一種と考えられます。
明らかに違う点は、他の相続人との協議ではないため自分の意思表示だけで済むことです。
相続分の放棄の対象となった相続財産は、自分以外の相続人に法定相続分で帰属することになります。
相続分の放棄には特に要式は定められていませんが、後続する遺産分割手続きの際にそのことを証明するために
専門家に相談して進めることをお勧めします。