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相続の手引き12_死亡保険金の相続対策としての活用例

相続時の生命保険活用メリット

相続の場面で生命保険は相続人にとって強い味方になる商品(選択肢)だと言われています、何故でしょうか?
それは、次のような特長を持っているからだとされています。

速やかな資金化

生命保険は、民法上は相続財産ではありません。保険金受取人の固有の財産とされています。
通常、相続が始まると相続人の金融資産(預金口座など)は凍結され(※)、遺産分割協議が済むまで引き出すことができません。
遺産分割協議がすぐにまとまれば、特に問題はないかもしれませんが、
中には遺産分割協議がなかなかまとまらず、
数か月かかってもまだ整わないこともありえます。
相続が発生すると、葬祭や被相続人の身辺整理など短期間でまとまった資金が必要になるケースが多く、
急な相続発生で相続人に手持ちの資金が無い場合は、いきなり資金繰りに困る事態になります。
被相続人の金融資産も凍結されて使えない、そんな時でも生命保険であれば速やかに資金化することができます。
死後の整理資金として、当座必要なお金は生命保険化しておくことで、相続発生直後の資金繰りに困ることがなくなります。
通常であれば、死亡保険金は請求から1週間程度で支払われるようです。

(※)民法改正により2019年7月より、被相続人名義の預金の一部仮払い制度が施行されています
出典:法務省 民法(相続法)改正パンフレット

相続放棄後も生命保険は受取可能

相続人の財産を調査した結果、プラスの財産よりマイナスの財産が多いことが判明した場合、どうしますか?
おそらく相続放棄が頭に浮かぶのではないでしょうか?
生命保険は民法上相続財産ではありませんので、仮に相続放棄をした場合でも受け取ることができます。(※)
生命保険を上手に活用すれば、死後に残された家族等に対して直接(遺産分割を介さず)、生活資金を渡すことができます。
参考:相続の手引き11_死亡保険金と課税関係(みなし相続財産)
(※)相続放棄した場合、受取保険金に対するみなし相続税非課税限度額の適用はありません。

納税資金・遺産分割資金(代償金)として活用

生命保険の強味は、①保険金受取人の固有財産となる、②速やかに資金化することができる、にあると言われています。
この強味を活かして、様々な資金繰りに利用することもできます。

納税資金

遺産分割協議がまとまらず、相続税申告(納税)までに納税資金が準備できない場合があるとします。
遺産分割ができなければ、金融資産も凍結されたままで引き出しできず、不動産も共有状態のままで処分できず、
納税資金を準備できないということも考えられます。
そんな時生命保険であれば、速やかに資金化されるので当面の納税資金として利用することも可能です。

代償金

相続財産が不動産のみで遺産分割に困っている、一方で調整金(代償金)も準備できない場合があるとします。
不動産や事業用株式など、その性質上相続人にきれいに分割することができない相続財産を遺産分割する場合、
相続人間の公平を調整するために、調整金(代償金)を支払って帳尻を合わすことはよくあることです。
そんな時でも、調整金を支払う側に手持ちの資金がなければ、相続財産を処分しなければなりません。
相続するために相続財産を処分しなければならないなんて、本末転倒なことです。
そんな時、生命保険であれば調整金(代償金)として利用することも可能です。

生命保険金は遺産分割の対象外(受取人を自由に設定できる)

相続では、相続財産を法定相続人以外が相続することはできません。
生命保険は、受取人の固有の財産で相続財産ではありませんから、遺産分割協議も必要ありません。
また、生命保険の受取人は必ずしも相続人にする必要はありませんから、相続では不可能だった人への財産の譲り渡しも可能です。
お世話になった方や、死後の生活が心配な方など、法定相続人以外にも財産を譲り渡すことができます。

特別受益の持ち戻しに当たらない

特別受益とは、相続人に対する①生前贈与や②遺贈(遺言で贈与すること)などが該当するとされます。
遺産分割前に相続財産を前払いする形にあたるため、その結果不利益を被ったと相続人が主張することがあります。
遺産分割協議がもめる原因のひとつで、家庭裁判所で遺産分割調停に発展することもあります。
特別受益に該当するとされた場合、その特別受益は持ち戻され相続財産に加算し、改めて遺産分割協議することとなります。
せっかく前払いしたにも関わらず、それが無意味になってしまいます。
しかし、生命保険は特別受益には当たらないとの判例が出ています。(最判 平成16年10月29日の前半部分
よって、持ち戻しされることもなく、遺産分割に巻きこまれることもなく、特定の相続人に財産を譲り渡すことが可能です。

ただ、生命保険を悪用して不当に財産を譲り渡したと認められる場合は、特別受益に認定されることもあります。
ご注意ください。(最判 平成16年10月29日の後半部分

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