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相続の手引き7_相続財産の調査と評価

相続財産の調査と評価

相続手続きを進めるにあたっては、相続人の確定とともに、相続財産を調査して評価額を確定させる作業も重要です。
何故なら、相続財産の評価額が不明瞭のままでは、相続税の申告が必要なのか否か確定させることができないからです。
早めに相続財産を調査し、概算でも評価額を把握することで、相続税の申告有無や相続税の概算額を掴むことができます。
これだけ知るだけでも、その後の相続手続きに対する心構えが全く違ってきます。
相続税の申告に該当する見込みなら、納税資金の手当てや、遺産分割協議などを早めに始める必要がありますし、
相続税の申告に該当する見込みがないなら、ご家族の都合で遺産分割などゆっくり話し合うことも良いでしょう。

相続税は現金納付

相続税納税は現金納付が原則です。
事前に相続財産を調査しておかないと、納税資金の調達も苦労するかもしれません。
不動産を現金化する場合など、準備期間もそれなりに見ておく必要があります、早めの準備が必要です。
また、相続財産を相続人間で遺産分けするにしても、財産の目録や各財産の評価額がわからなければ
話し合いが始められないと思います。
遺産分割には期限が無く、いつ分割するかは原則として相続人の自由ですが、
相続税申告(死亡から10か月以内)までに遺産分割が成立していると、相続税の軽減メリットを享受することができます。
そのためにも、相続財産の調査は早く行う必要があるのです。

相続財産の調査を急ぐもう一つの理由

相続の一般的効力は、民法896条にこう規定されています。

(相続の一般的効力)
民法第896条  相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。 

この条文には「一切の権利義務」を承継すると書かれています。これの意味するところは、
プラスの財産だけでなく、マイナスの財産(負債)をも承継するということを意味しています
相続財産の調査をしないでいると、知らず知らずに亡くなった方の負債(借金)も相続してしまいます。
調査を怠ったり適当に済ませてしまうと、思わぬ形で借金を背負う羽目になるかもしれません。
亡くなった方の負債を相続しないためには、相続放棄の手続きをする必要があるのですが、
手続きをしなければならない期限がとても速いのです。

相続放棄の手続き期限(原則)=相続があったことを知ってから3か月以内

おそらく相続関係の手続きのうち、最も期限が早いものが相続放棄の手続きです。
相続にマイナス財産(負債)は無い、と思い込みで進めたりぜず、きちんと調査してください。
後々で後悔しないためにも。

相続財産の調査範囲と方法

基本的に経済価値のあるものは、すべて相続財産となります。
不動産を中心に、金融資産や動産などのほか、借入金などの負債も相続財産に含まれます。

プラスの財産

①不動産(土地、建物)
毎年4月に市町村から届く固定資産税納付書や通知書、または市町村役所で固定資産の名寄帳を閲覧して物件を特定する。
②動産(自家用車、骨とう品、貴金属類など)
自動車などは陸運局に登録されているが、それ以外の動産は現物を特定して目録を作成する。
③金融資産(現預金、株式、公社債、手形など)
預金通帳やネット取引などの記録を検索し、取引のある金融機関を特定し、金融機関ごとに口座情報の目録を作成する。
④債権(貸付金、信託受益権など)
⑤死亡保険金(注1)
⑥ぞの他(事業売掛金、未収金など)
各種契約書などが残っていれば、それを手掛かりにして調査するほかにない。
(注1)相続人が受取人となる死亡保険金は相続財産ではなく、受取人固有の財産として扱われます。
ただし、非課税限度額(500万円×法定相続人の数)を超える受取保険金には、みなし相続財産として相続税が課税されます。

マイナスの財産

①借入金
②保証債務(連帯保証債務)
③その他(事業買掛金、未払金など)
各種契約書などが残っていれば、それを手掛かりにして調査するほかにない。
※特に保証債務(連帯保証債務)は、地雷のように、債務者が債務不履行になるまで表面化してこないなど
調査が困難な場合が多いという事を知っておいてください。

土地の相続税評価額算出の簡便法

相続財産の一覧表が出来上がったら、次はその財産の評価を行います。
ここでの財産評価の目的は、相続税課税の観点からという事に注意してください。
相続税が課税されるか否かで、その後の手続きの手順が全く違ってくるため、その判断をする目的で財産評価を行います。
なお、遺産分割を協議する際の財産評価は、相続人間で合意した方法であれば何でも構いません。

相続財産の評価で最も問題になるのは、不動産、特に土地の評価でしょう。
その他の財産は、額面価額や時価評価の手法が確立しているなど、それほど苦労せず評価することができると思います。
しかし土地は「一物四価」と言って、その目的によって評価方法が様々存在してややこしいのです。

実勢価格

実際に不動産取引で売買される際の土地価格のことで、近隣の取引実績からの想定価格です。

公示地価

国交省が全国の土地計画区域内の一定地点(標準値)につき、毎年1月1日時点の価格を評価したものです。

路線価

相続税や贈与税を計算するため国税庁が定めた価格のことです。

固定資産税評価額

市町村が固定資産税を課税する際に独自に評価した価格です。

これら一物四価の関係は、およそ次のとおりと言われています。
・公示地価≒実勢価格
・路線価=公示地価×約80%
・固定資産税評価額=公示地価×約70%

この結果、土地の相続税評価額の簡便法は以下のとおりとなります。
つまし、固定資産税評価額から逆算して、路線価を推定する簡便法です

固定資産税評価額 ÷ 70 × 80 = 路線価

相続財産の評価が出そろったら、次は相続税の課税有無の確認作業に進むことになります。

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