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10.72019
相続の手引き2_相続手続きの流れ
相続が発生しました、今後どんな手続きをいつまでにしなければならないかを解説します。
まずは、葬儀や法要、行政窓口などへの諸届出を行います。
おそらくかなり慌ただしく日々が過ぎて行くと思いますが、今回の相続手続きも待ったなしなのです。
目 次
遺言書の確認と検認手続き
期限:なし(すみやかに)
まず最初に、お亡くなりになった方が「遺言書」を残していないかを確認します。
遺言書には普通方式と特別方式がありますが、
特別方式の遺言は、死亡の危急時や船舶遭難時など、特別な状況を想定したものです。
通常は普通方式の遺言が使われるはずです。
普通方式の遺言には①自筆証書遺言、②公正証書遺言、③秘密証書遺言がありますが、
それぞれ遺言の探し方は以下の通りです。
もし遺言書が発生された場合は、②公正証書遺言を除いて、家庭裁判所に検認を請求する必要があります。
検認とは相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに,遺言書の形状,加除訂正の状態,
日付,署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。
遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。
自筆証書遺言 | 検認要 | 自宅保管、知人・専門家預り、銀行預りなど、最も探し出すのが困難です。 |
公正証書遺言 | 検認不要 | 公証役場に原本が保管されてるため、問い合わせすれば確認可能です。 |
秘密証書遺言 | 検認要 | 作成時に公証人が関与しているため、存在有無の確認は可能です。ただし原本は自筆証書遺言と同じ方法で探すしかありません。 |
相続人の確定
期限:なし(すみやかに)
次に行うことは、相続人の確定作業です。
日本は、民法で遺産を相続できる者の範囲を規定しており、これを法定相続人といいます。
ただし法定相続人のうち、誰が相続人になるのかはその状況により変わってきます。
よって法定相続人の中から、今回の相続での相続人を確定させる作業が必要になってきます。
相続人を確定しなければ、遺産が誰に相続されるのかが決まらず、遺産分割をすることができません。
また、相続人の確定作業を怠り、誤った相続人で遺産分割協議した場合、その遺産分割協議は無効となり、
やり直ししなければなりません。後続する手続きも連動して無効、やり直しとなるでしょう。
このように、相続人の確定作業は大変重要な作業だと認識して下さい。
時として、予想できない相続人が登場する場合もあります。
相続人を確定させるには、亡くなった方の戸籍を出生まで遡って調査する必要があります。
戸籍を読み取る専門知識が必要となりますので、必要に応じて専門家に相談することをお勧めします。
遺産の調査
期限:なし(すみやかに)
続いては、亡くなった方の遺産を調査して確定させる作業です。
通常は、「2.相続人の確定」と並行して行うことになると思います。
相続財産の確定は、相続税の課税有無を把握するために必要な作業です。
もし相続税の課税が予測されるなら、納税資金の調達方法も検討しなければならないでしょう。
納税資金捻出のために不動産の売却が必要であれば、売却に要する時間は案外かかるものです。
また、相続財産が確定しなければその後の遺産分割の検討もできません。
遺産分割がされないと、相続財産は法定相続人の共有財産になってしまいます。
現預金や有価証券など流動性の高い財産なら、共有でもあまり問題となりませんが、不動産の共有は最悪です。
あとあと共有者間でその不動産の処分をめぐり、もめる原因となる可能性が高いのです。
従って、できるだけ早期に相続財産を確定し、遺産全体を把握しておくことが円満な相続には重要なのです。
相続放棄・限定承認
期限:3か月以内
相続財産は、必ずしもプラスの財産とは限りません。
もしかするとマイナスの財産(借金=負債)を残して亡くなった、ということもあるかもしれません。
もし仮に、負債があることが発覚した場合、財産だけ相続して負債は放棄する、ということは許されるのでしょうか?
民法にはこう書いてあります。
民法896条(相続の一般的効力)
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りではない。 |
この条文の前段には「一切の権利義務を承継する」と書いてあります。
相続の効果は、被相続人は財産も負債も包括的に承継(受け継ぐ)するということです。
従って、負債だけを放棄することはできず、放棄するなら相続分全部を包括的に放棄する必要があるのです。
このように、ご自身の相続分(財産も負債も)を包括的に承継するのか、相続放棄するのかを決める必要がありますか、
ここにもルールがあり、相続開始から3か月以内と決まっています。
3か月なんてあっと言う間です、
もたもたして、何の意思表示せず3か月を経過してしまうと、単純承認と言って包括承継したとみなされますから、注意してください。
※限定承認の説明はここでは割愛します。
遺産分割協議
期限:なし(できるだけ早く)
遺産分割自体には、原則として期限がありません。
しかし、できるだけ早く行ったほうが良い理由があります。
相続税の申告期限は、相続開始から10か月以内と決まっていますが、
相続税申告までに遺産分割が成立していれば、以下の相続税の軽減措置を受けられるメリットがあるのです。
①配偶者の税額の軽減
②小規模宅地等の特例
③農業相続人の農地相続時の納税猶予
④非上場株式等の相続税の納税猶予
⑤相続税の物納
あてはまる場合はかなりのメリットとなるため、
相続税申告の前に、できるだけ遺産分割協議を済ませておくべきなのです。
なお、相続税申告義務のない方は上記メリットは無く、遺産分割をいつしようと自由です。
所得税の準確定申告
期限:4か月以内
亡くなった方の、1月1日から亡くなった日までの所得を計算し、
納付するべき所得税があれば申告、納付を行う必要があります。
相続税の申告・納付
期限:10か月以内
相続財産の課税価格の合計額が、基礎控除額を超える場合、相続税の申告、納付を行う必要があります。