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10.92019
相続の手引き4_遺言書の確認と検認作業
有効に遺言が成立し、遺言書に相続分の指定や法定相続人以外への遺贈などが記載されていた場合、相
続に多大な影響を及ぼすことになります。
よって、相続が始まった場合、まず遺言の有無を確認したほうが良いでしょう。
目 次
遺言書の探し方
①公正証書遺言
公正証書遺言は公証役場に原本保管されています、よって比較的発見することは容易です。
公証役場に問い合わせして、遺言書の検索を依頼すれば良いでしょう。
②自筆証書遺言・秘密証書遺言
保管場所は故人が決めるため、発見することが困難な場合も多く、紛失の危険性があります。
一般的には次のような場所に保管されるケースが多いようです。
(自宅内)金庫、本棚(本に挟み込む)、タンス、机の引き出し、屋根裏など
(自宅外)貸金庫、友人や遺言執行者(専門家)などへの預け
故人が遺言書を作成しても、それが発見されなければ遺言執行されることもありません。
慎重に探しても発見されなかった時は、そもそも遺言は無かった事になってしまいます。
遺言書を作成した場合は、確実に発見される方法も合わせて検討しておく必要があります。
保管が確実で発見も容易ということで、お勧めは「公正証書遺言」ですが、
民法改正により2020年7月10日からは、自筆証書遺言の法務局保管制度が始まります。
自筆証書遺言の弱点であった、発見されない危険性がかなり改善されますので、
今後は法務局の保管制度も選択肢に入れてはいかがでしょうか。
遺言書が見つかった時
自筆証書遺言や秘密証書遺言が見つかった時は、その場で開封しないようにしてください。
公正証書遺言とは異なり、自筆証書遺言と秘密証書遺言は家庭裁判所により検認手続き(後述)が必要です。
検認手続きの前に開封してしまうと、開封により遺言書の内容を自己に有利に書き換えたのではないか、との疑いが懸念され、
場合によっては争いの原因となる可能性があります。
繰り返しますが、遺言書を見つけた場合は、開封せずに、そのまま家庭裁判所に持ち込んでください。
なお、誤って開封してしまった場合は、それにより遺言書が無効となること自体はありませんが、
民法1005条の規定により5万円以下の過料が科される可能性があります、ご注意下さい。
遺言書が見つからない場合
自筆証書遺言や秘密証書遺言は、故人が遺言書を書いていること自体を隠していることも多く、
発見されないことも多々あります。
このように、故意なく遺言書が発見されない場合は、遺言書の存在自体が無かった事になってしまいます。
せっかく書いた遺言書です、死後に発見されるように工夫しておくことも重要です。
一方で、誰かによって遺言書が破棄、隠匿等された場合は問題となります。
(相続人による破棄、隠匿等)
民法891条5号には、相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者は、
相続人の欠格事由にあたるとされています。
よって、相続人が(故意に)遺言書を破棄、隠匿した場合は原則として相続欠格事由にあたり、その方は相続を受けられなくなります。
なお、最高裁判例(最判平9年1月28日)では、相続人が遺言書を破棄、隠匿した場合に相続欠格事由に該当するには
「相続に関して不当な利益追求の目的」がある場合に限るとした判例があります。
単に破棄、隠匿しただけでは無く、自分に利益があるからこそ破棄、隠匿したと証明された場合に相続欠格となる、という判例です。
ご参考まで。
(相続人以外による破棄、隠匿等)
このような事例はあまりないとは思いますが、ほかの相続人が知らないうちに他人に遺言書が
破棄、隠匿されたしたらどうでしょう?
おそらく「見つからない場合」に該当するものと思われます。
他人により遺言が偽造されたり、変造されたとしても、それが偽物だと証明されなければ、
本物として扱われてしまう可能性もあります。
このように、自筆証書遺言、秘密証書遺言については、見つからない危険性だけでなく、
破棄、隠匿等の危険性にもさらされるということを知っておいてください。
家庭裁判所での検認作業
さて、公正証書遺言以外の遺言書は家庭裁判所による検認作業を要します。
検認とは、遺言書の形状を調査・確認し、遺言書の内容を明確にして偽造や変造を防止するために行う、
一種の検証・証拠保全のための手続きです。(形式的チェックと、お知らせ)
よって、検認が済んだからと言って、遺言書の記載内容に法的な効力が発生するような手続きではありません。
検認を行うには、以下の書類を揃えて、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申立手続を行います。
⓪申立書
【共通】
①遺言者の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
②相続人全員の戸籍謄本
③遺言者の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
【相続人が遺言者の(配偶者と)父母・祖父母等(直系尊属)(第二順位相続人)の場合】
④遺言者の直系尊属(相続人と同じ代及び下の代の直系尊属に限る(例:相続人が祖母の場合,父母と祖父))で死亡している方がいらっしゃる場合,その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
【相続人が不存在の場合,遺言者の配偶者のみの場合,又は遺言者の(配偶者と)の兄弟姉妹及びその代襲者(おいめい)(第三順位相続人)の場合】
⑥遺言者の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
⑤遺言者の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
⑥遺言者の兄弟姉妹に死亡している方がいらっしゃる場合,その兄弟姉妹の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
⑦代襲者としてのおいめいに死亡している方がいらっしゃる場合,そのおい又はめいの死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
申立後は、家庭裁判所から申立人と相続人全員に検認期日のお知らせ(通知)通知がきます。
検認期日に家庭裁判所に出廷するのは、申立人のみです。
そして遺言書の開封と検認をした後、開封済みの遺言書を受け取って終了です。
なお、申立人以外の相続人は出廷義務はありません。
検認の続きにはおおよそ2か月程度かかります。
検認が済むまでは、遺言の内容もわからないため遺産分けをすることができません。
相続税申告が予定されるケースであれば、早めの検認申立てが望ましいでしょう。
実際には、いつ遺言書が出てくるかわからないため、なかなか思うとおりに行きません。
やはり、ここでも公正証書遺言がお勧めです、検認手続きが不要ですから。
遺言書が後で見つかった場合(遺産分割後)
遺産分割後に遺言書が出てくるケースがあるかもしれません。
遺言書を尊重して遺産分け一からやり直しすることもできますが、
その場合は、遺産分割に後続する相続税などの諸手続きも影響を受けます。
専門家に相談して進めるようにしてください。
なお、相続人全員の合意があれば、遺言書と異なる遺産分割をすることは可能です。
従って遺言書の内容如何では、既にしてしまった遺産分割を変更する必要ない場合もあり得ます。
こちらも専門家に相談して進めるようにしてください。