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相続の手引き5_遺言書でできること

遺言書が果たす役割

遺言書の果たす役割は何でしょうか?
遺言書を書くことは、義務ではありません。
では、何故わざわざ手間と、場合によってはお金もかけて遺言書を書くのでしょう?

それは、遺言書に認められた法律効果を期待してのことなのです。
一般に、遺言書を書く動機と言われる理由には次のようなものがあります。
・自分が築いてきた財産を、自己の意思で次世代へ有効に譲り渡したい
・これまでの家族の実態生活を考慮した公平の実現をはかりたい
・相続人以外にも財産を譲り渡したい人がいる
・争いが予測されるケースで、遺言書であれば家族も納得するだろうと期待して

遺言書が作成されている割合

では現在日本では、どのぐらいの方が遺言書を利用しているかご存知でしょうか?
下記のグラフをご覧ください。

死亡者数の増加に伴い、遺言作成件数は増えています。
統計データのうち公正証書遺言は、その年に公正証書遺言が作られた件数で、検認は、家庭裁判所で自筆証書遺言等の
検認があった件数を示しています。
公正証書遺言は作成時と死亡時との年度がずれる可能性があること、検認はあくまで家庭裁判所に持ち込まれた件数ですから、実際に遺言書が作成された件数とは一致しません。
よって死亡者数に対する遺言書の割合は正確ではありませんが、おおよそのその傾向はつかめます。

ここ数年でやや遺言書の割合は増えているものの、それでも依然として遺言書を作成する人は案外少なく、
発見されない遺言書を多少勘案しても、遺言書を作成している方は全体の1割前後と考えられます。
契約書文化と言われる欧米では、遺言書が作成される割合は6~8割にのぼるともいわれます。
日本で遺言書が普及しない理由は何でしょうか?

遺言書が思ったほど普及しない理由

日本で遺言書が普及しない理由は、これも推測にすぎませんが次のように考える日本人が多いからではないでしょうか?
・自分があえて遺言書で示さなくても、家族が話し合って良しなに解決するだろう(希望的観測)
・法定相続分が法律で決まっているのだから、それで分ければいい
・遺言書と遺書の区別がつかず、死ぬことを連想して気持ちが向かない
・遺産分けでもめるほどの財産は無いから、書いても意味が無い
では、実際に最近の相続事情では、どの程度の割合で争いになっているかご存知ですか?

関連リンク:遺言・相続
関連リンク:相続相談弁護士ガイド

 

増加する相続の争い

残念ながら、相続で争いが起きる件数、割合とも近年は増加傾向にあります。


争いの原因が、必ずしも遺産の額の多寡ではないこともわかっています。
核家族化の進行や、日本人の意識の変化(自分ファースト)、家族のコミュニケーション不足など
思いつく原因を挙げればきりがありません。
日本での相続財産の内訳を見ると、40%超の割合で土地建物(不動産)が占めていることがわかります。
ここ最近の比率は減少傾向ではありますが、それでも多くの財産は不動産なのです。
出典:国税庁 平成28年分の相続税の申告状況について

不動産は、相続人に都合よく分割できる性質ではありません。
評価の方法も「一物四価」と言われ、どれをもって評価するかで争いの対象になるかもしれません。
売却換価する方法もありますが、遺産分割するまでは相続人の共有財産ですから、全員の同意がなければ売却できません。
このように、特に遺言書なしで相続人に委ねると争いになるケースも多いのです。

遺言制度の概要

ここで、遺言書に関する基礎知識をまとめておきます。遺言書はただ書けば良いというものではありません、ルールが決まっています。

■遺言とは
遺言とは、死亡と同時に身分上のまたは財産上の事について法律上の効果を生じさせるが、
これを実現するには法定の要件を満たす必要がある。
■遺言を作成できる人
・遺言作成時に満15歳以上
・遺言作成時に意思能力を有すること
■遺言書作成の要件
・遺言書は必ず書面で、法律に従って作成されたものであること。
自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言、その他特別の遺言それぞれに、民法で定められた要件が決まっています。

遺言書で決めることができること

要件を満たした遺言書であれば、そこに書かれたことに法律効果が付与されます。
ただし、書いたことすべてに法律効果が与えられるわけではありません。
遺言書で決めることができる主なことは次のとおりです。

身分に関するもの

1.認知
 女性との間に婚姻外で出生した子を、遺言で認知すること。
2.後見人の指定
残された未成年の子の親権者が不在となる場合、遺言で第三者を未成年後見人および後見監督人を指定すること。

相続に関するもの

3.相続人の排除および排除の取り消し
自分に対する虐待や重大な侮辱、あるいは著しい非行を行った相続人を遺言で排除し、または排除を取り消すこと。
4.相続分の指定
相続人に対し法定相続分と異なる相続分の指定をすることができる。(指定相続分)
5.特別受益の持ち戻しの免除
相続人への生前贈与を、相続時に持ち戻し(生前贈与を相続財産に加算して相続分を計算すること)を免除すること。
6.遺産分割方法の指定または指定の委託
遺産分割の方法を遺言で指定することができます。遺産分割の方法を第三者に委託することもできます。
①現物分割 ②換価分割 ③代償分割 ④遺産の相続人間での共有 ⑤特定の遺産を特定の相続人に取得させる
7.遺産分割の禁止
相続の開始から5年を超えない期間を定めて、遺産分割を禁止することができる。
8.相続人相互の担保責任に指定
相続財産に瑕疵があった場合相続人は担保責任を負いますが、遺言で担保責任の負担者や負担割合について指定することができる。
9.遺言執行者の指定または指定の委託
遺言で、相続手続きする者(遺言執行者)を指定したり、第三者に指定を委託することができる。
10.遺贈
遺言により、財産を特定の人に贈与する行為のことで、相続人に限らず第三者に対してもすることができる。

 

このように、自分の最終意思を残された人に伝えることができるのが遺言の最大の効果です。
あえて遠ざけることはせず。必要に応じて遺言を有効に活用することも検討してください。
また、遺言が有効とされるには法定の要件(形式も)を満たす必要があります。
専門家に相談するなど、せっかく書いた遺言書が無効とならないように気を付けてください。

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