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相続の手引き6_相続人の確定作業

法定相続人と推定相続人と相続人の違い

似ている言葉に、法定相続人、推定相続人、相続人がありますが、それぞれ意味が違うことをご存知でしょうか?
知らず知らずに意味を取り違えて使っている場合もありますので、これを機に覚えてください。

法定相続人

法定相続人とは、民法に規定されている相続人のことを言い、その範囲は次のとおり法定されています。
言い換えれば、民法が定める「相続することができる人」のことで、相続した人とイコールではありません。
0.配偶者
1.第一順位 子(代襲者=直系卑属)
2.第二順位 直系尊属
3.第三順位 兄弟姉妹(代襲者=子のみ)
順位下位にある法定相続人は、順位上位の法定相続人が存在しない場合に限り相続人となります。
なお、子と兄弟姉妹には「代襲相続」制度があります。
相続前に法定相続人が死亡していた場合、その直系卑属が相続人となる制度です
が、両者で代襲者の範囲が違います。

孫や子の配偶者は、どんなに関係が近くても法定相続人ではありませんから、相続することはできません。

推定相続人

相続前のある時点で、相続する権利を有する法定相続人を推定相続人と言います。
配偶者は存命なら必ず推定相続人ですが、順位のある法定相続人は、その時点で最優先順位にある者のみが推定相続人です。
実際の相続までに、推定相続人が死亡、相続放棄、廃除などで法定相続人に異動があると、
推定相続人は変更することになります。

相続人

単に相続人として言葉を使う場合は、相続が開始した段階で相続することができる人を指す場合が多いです。
当然ですが、相続人が相続開始後に相続放棄をすれば相続人ではなくなります。

相続人の確定を急ぐ理由

相続が始まったら、最初に必ず相続人を確定させる必要があります、なぜでしょうか?
それは相続人が確定しなければ、その後の遺産分割作業を進めることができず、
つまでも個別の相続財産分けすることができないからです。

相続財産を、相続人間でどのように分割し譲り受けるか協議することを遺産分割協議と言いますが、
遺産分割協議をするためには、相続人全員が揃って協議したうえで、遺産分割協議書に全員が実印で押印する必要があります。
遺産分割協議は、相続人が一人でも欠けていると無効とされます。
従って、相続人全員を確定させる作業は、遺産分割協議の前提作業として非常に重要です。

相続人の確定なんて簡単では?、とお考えの方も多いと思います。
確かに、多くのご家庭ではそれほど難しいことではないかもしれません。
しかし実は、家族が知らない法定相続人が存在していることも、それほど珍しいことではないのです。
例えば、前婚での子や婚外子の認知などがあった場合、これらは法定相続人です。
たとえ知らなかったとしても
、相続人が全員揃わなければ遺産分割協議はできません。
してしまった遺産分割協議は無効です。

相続人の調査には法的知識が必要

相続人を確定させるためには、死亡した方の戸籍謄本を出生まで遡って調査する必要があります。
相続人の調査の手がかりとなる情報は、直近の戸籍謄本だけを見てもわかりません。
子を認知した事実があれば父親の戸籍に記載されますが、除籍、転籍、改製など、
既に直近の戸籍謄本からは消えてしまった情報があるかもしれません。
相続排除の情報などは、本人の戸籍ではなく推定相続人の戸籍に記載されますから、
いくら本人の戸籍を追いかけても出てきません。
また、相続欠格はそもそも戸籍謄本には記載されません。
古い様式の戸籍謄本であれば、情報の読み取りも苦労するかもしれません。

このように、一言で相続人確定と言っても、法律知識に基づく調査が必要なのです。
複雑な家庭事情を抱えている場合は、専門家に調査を依頼することも検討してはいかがでしょうか。
行政書士は相続人調査の専門家です。

遺産分割協議が行えない場合

相続人が確定した場合でも、実際に協議して遺産分割協議書を締結しなければ、相続手続きは進みません。
何らかの事情で遺産分割協議が行えない時の対応方法をご紹介します。

相続人が所在不明な時

確定した相続人が生存しているものの、所在が不明、音信不通などで、連絡など取ることができない場合は、
家庭裁判所に対し「不在者財産管理人選任の申立て」を行い、選任された不在者財産管理人が相続人に代わって
遺産分割を行うことができます。

出典:裁判所・不在者財産管理人選任

相続人が生死不明な時

確定した相続人の生死が不明の場合は、家庭裁判所に対し「失踪宣告の申立て」を行います。
失踪宣告には、法律上死亡したとみなされる効果があります。
死亡により相続人ではなくなりますので、当該人を除外して相続を進めることが可能となります。

普通失踪 

生死が7年間明らかでないとき

危難失踪 

戦争,船舶の沈没,震災などの死亡の原因となる危難に遭遇しその危難が去った後その生死が1年間明らかでないとき

出典:裁判所・失踪宣告

相続人が非協力的な時

相続人が確定しその住所が特定できたとして、何度連絡をしても協力を得られず、手続きが進められないことがあるかもしれません。
こんなケースでは、まず対応があるまで何度も連絡を取るべきですが、それでも埒が明かない場合は、
家庭裁判所に対し「遺産分割調停の申立て」も選択肢に入ってきます。
調停が始まると、家庭裁判所から当該人(非協力的な相続人)に対し出頭命令が発せられますので、自分で連絡を取る必要は無くなります。
仮に当該人が出頭しないと、調停が不成立となり、遺産分割審判に移行していくこととなります。

出典:裁判所・遺産分割調停

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