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長寿化と認知症

長寿化の進む日本

日本社会で、高齢化が叫ばれて久しく経過します。
統計によると、2018年現在の男性の平均寿命約81歳、女性は約87歳と、いずれも過去最高を更新し、
世界でも最長寿国のひとつとされています。
この年齢でも充分に長寿だとの印象ですが、実際にはさらに長寿化が進んでいることをご存知でしょうか?
平均寿命の計算方法は割愛しますが、必ずしも実態ではなく、あくまでも統計上の計算結果にすぎません。
実態に近いのはむしろ、寿命の中央値、最頻値ではないかと思います。

寿命の中央値とは、仮に男女が各10万人出生したとして、
累計の死亡者数が半分の5万人に到達する年齢のことをいいます。
中央値では男性は約83歳、女性は約89歳となり、平均寿命より2歳ほど長寿という結果が出ています。
更に寿命の最頻値とは、各年齢ごとの死亡者数で最も多い年齢(ボリュームゾーン)をいいます。
男性が約87歳、女性はなんと約93歳となり、平均寿命より6歳も長寿という結果なのです。
多くの方が実際には平均寿命よりも長生きで、今や本当に、人生100年時代が現実になろうとしています。

 

長寿化により認知症患者も増えています

長寿化が進む一方、高齢期の健康問題は避けて通ることはできません。
中でも認知症は、判断能力の低下に伴う意思能力の欠如が相続に影響を及ぼす問題となります。

認知症が、単なる老化にともなう「もの忘れ」ではなく「脳の疾患」ということは、今日ではかなり知られてきました。
内閣府の発表した高齢化白書には、65歳以上の認知症患者の推移が予測されています。
2020年では65歳以上の認知症患者数は約600万人ですが、2040年には約800万人、
2060年には約850万人に増加すると予測されています。
また認知症患者数の65歳以上人口に占める割合は、2020年の約17%に対し、2040年では約21%、
2060年には4人に1人の約25%に上昇すると予測されています。

少子高齢化が進み認知症患者も増加することもあり、
今後は相続の場面で認知症と向き合わなければならないケースが増加します。
決して他人事ではなく、認知症になった場合の問題点を知ることで、事前に準備するべき対応がわかります。
これだけでも十分な相続への備えになると思います。

 

認知症の疑いがあれば医師の診断を

相続が発生して、家族で遺産分割を協議しなければならない場面でも、
相続人に認知症の疑いがある方がいる場合は注意が必要です。
もし相続人の中に、民法上の意思能力を欠いた方がいれば、その方は遺産分割に参加することができません。
遺産分割には相続人全員の同意が必要ですから、意思能力を欠く方を除外して行った遺産分割も無効です。
もちろん、誰かが成り代わって行った遺産分割も無効です。

ひとくくりに認知症と言っても、その症状は千差万別です。
症状が進み、精神上の障害、判断能力の衰えが顕著になってきた場合は、
念のため、病院で認知症検査を受けることをお勧めします。
診察時には医師からの質問に答えられるように、これまでの症状のメモを用意したほうが良いでしょう。
診断書には、医師による判断能力に関する意見が付されます。
成年後見制度の利用が相当、との意見が付された場合は、ご家族で慎重に協議して今後の対応を検討してください。
成年後見制度は、判断能力の弱った本人を保護する制度であるとともに、本人の社会的地位も奪ってしまう制度だからです。
なお、認知症が進んでいてもまだ本人に判断能力が残っていれば、自ら遺産分割協議をすることが可能です。
だからこそ、認知症の兆候が出始めたなら、早めの対応が重要なのです。

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