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10.32019
同一労働同一賃金の概要
目 次
同一労働同一賃金の概要
実施時期:<パート・有期雇用労働法 施行日2020年4月1日>
実施時期:大企業2020年4月~、中小企業2021年4月~
前回は、事業者のみなさんにとって最も関心の高いであろう、「残業時間の上限規制」の概要についてお話ししました。これに対する対策案については、改めて別の機会にお話しするとして、今回は、同一労働同一賃金についての概要を説明します。これも、比較的事業者のみなさんの関心が高い問題ではないかと思います。そもそも、今回の働き方改革が、どのような背景で検討されるようになったのかを、改めて振り返りましょう。
非正規雇用は一貫して増加傾向
働き方が多様化し、パート、アルバイト、契約社員など、いわゆる非正規雇用といわれる就業形態は、バブル景気が崩壊した1990年代から一貫して増加していることがわかります。ここで問題となるのは、正規雇用と非正規雇用の明確な待遇差の存在です。非正規雇用が増加した結果、現在では労働者の5人に2人は非正規雇用の状態です。
非正規雇用の賃金水準は、日本の場合、正規雇用の約60%程度の水準に留まっていると言われています。その結果、低所得者層に該当する人口の比率が高まり、日本全体で静かに貧困化社会の拡大が進んでいると言われています。バブル景気の崩壊以降、企業の業績低迷、低成長が続いています。企業は非正規雇用を増やしているのは、人件費という固定費コストの削減にほかなりません。多様な働き方を望み、自分の意思で非正規雇用となった方は別としても、正規雇用を望みながらやむを得ず非正規雇用として働いている方が相当数存在していることもわかっています。ある調査結果では、非正規雇用の6割以上が正規雇用を希望している、という調査結果もあります。これらの待遇差からくる所得格差が、間接的に少子高齢化、人口減少の一因とも言われており、これに対等対策として政府が打ち出したのが「同一労働同一賃金」です。
「同一労働同一賃金」とは?
では、同一労働同一賃金が実施された場合、どんな事が起こりどんな対応を取らなければならないか、簡単に説明します。厚生労働省の同一労働同一賃金サイトにはこう書いてあります。
同一労働同一賃金とは 同一労働同一賃金の導入は、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者) と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。 同一企業内における正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消の取組を通じて、どのような雇用形態を選択しても納得が得られる処遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できるようにします。 関連サイト:厚生労働省 同一労働同一賃金ページ |
これを読んで、すぐに意味が理解できる方はそう多くないのではないでしょうか。私も自分が企業の人事担当者だったら「結局どうすればいいの?」と聞くと思います。企業は、具体的に社内規定レベルに落とし込む必要がありますから、抽象的なままでは困ると思います。キーワードは「正規雇用と非正規雇用の不合理な待遇差の禁止」です。改正パート・有期雇用労働法の8条に均等待遇、9条均衡待遇として規定されています。
均衡待遇規定
不合理な待遇の禁止
第8条 事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。
言い換えるなら、
正規雇用と非正規雇用の待遇差が、仕事内容や求められる責任の重さ、仕事内容の違いに応じた人事考課や転勤などの待遇差、その他総合的に考慮すべき諸事情全般を考慮してもなお不合理なら禁止される。 |
均等待遇規定
通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止
第9条 事業主は、職務の内容が通常の労働者と同一の短時間・有期雇用労働者(第十一条第一項において「職務内容同一短時間・有期雇用労働者」という。)であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるもの(次条及び同項において「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」という。)については、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならない。
言い換えるなら、
仕事内容や求められる責任の重さ、仕事内容の違いに応じた人事考課や転勤などの待遇差、が同じであるなら、正規雇用と非正規雇用で、賃金などの待遇に格差を設けてはならない。 |
誤解を恐れずに一言で言うなら、「仕事の内容が同じなら、正規雇用か否かに関わらず待遇に差をつけてはならないが、処遇面や仕事に求められるスキル、責任に差があるなら、それに基づく待遇差は合理的である限り有効」ということになると思います。
同一労働同一賃金ガイドライン
実際に企業で具体的な社内規定に落とし込む場合のため、厚労省によるガイドラインが示されています。これだけを読んでも、具体的な対応策は立てにくいと思いますので、別の機会にもう少しかみ砕いて解説することにします。
関連リンク:厚労省 非正規雇用の現状と課題
関連リンク:厚労省 賃金構造基本統計調査