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1.222020
遺族年金の仕組み ~遺族基礎年金と遺族厚生年金の違い④~
目 次
ケース別の遺族年金支給額
では、ある家族をモデルにして、いったいどれほどの遺族年金が支給されるのか比較してみます。
家族構成により受給できる遺族年金の比較
まずは基本的な家族構成である、夫婦+子の家族構成で比較します。死亡時から、時系列での支給額の推移も見ていきます。遺族年金では「年齢」がキーポイントとなります、注意してください。※受給にかかる諸要件は全て満たされていると仮定します。
夫(会社員)妻(専業主婦)で子の有無による比較
Aさん夫婦は、両者の加入年金種別と子の有無の違いにより受給できる年金種別(年金額)に大きな違いが生じること説明します。
Aさん夫婦(夫55歳(会社員)妻50歳(専業主婦)) 夫死亡のケース(子あり・子なし)
夫が会社員であったため妻には遺族厚生年金が支給されるのは子の有無にかかわらず共通ですが、遺族基礎年金は18歳年度末前の子がある場合にしか支給されません。よって、子なしのケースでは遺族基礎年金は支給されません。
遺族厚生年金には中高齢寡婦加算制度があり、夫の死亡時の子のない妻、または夫の死亡時に子があってその後子が失権年齢に達した妻には、65歳になるまでの間、中高年寡婦加算59万円が支給されます。なお、中高齢の寡婦加算は妻が65歳になると失権しますが、その代わり65歳になると妻本人に老齢年金の受給権が発生します。
Aさん夫婦(夫55歳(会社員)妻50歳(専業主婦)) 妻死亡のケース(子あり・子なし)
妻は専業主婦でした、よって厚生年金への加入がありませんので、夫には遺族厚生年金の支給は無く、18歳年度末前の子がある場合は遺族基礎年金が支給されます。また、妻には支給される中高年の寡婦加算のような救済制度もなく、このケースの場合、夫本人に老齢年金が支給されるようになるまではご自身で生活収入を獲得する以外にありません。
このように、加入する年金制度の差や男女差、子の有無の差によって受給できる年金種別、年金額に大きな違いが生じることがわかります。
夫(会社員)妻(会社員)で夫の年齢による比較
Bさん夫婦では、妻死亡時の夫の年齢による差を説明します。
Bさん夫婦(夫52歳(会社員)妻50歳(会社員)子15) 妻死亡
Bさん夫婦(夫55歳(会社員)妻50歳(会社員)子15) 妻死亡
Bさん夫婦のケースでは、遺族厚生年金の男性に課される年齢条件に焦点をあてて比較しています。妻が死亡した時に、夫は55歳以上でなければ遺族厚生年金の受給権が発生しません。また、受給権が発生した場合でも、夫には60歳に到達してからではないと遺族厚生年金は支給されません。
前回のその③でも解説しましたが、遺族厚生年金に受給権の男女格差(年齢・寡婦加算など)があることは、男女間の労働力人口の割合差や、男女の平均賃金格差、一般的な男女の雇用期待格差などを勘案すると、必ずしも不合理ではないとの最高裁判決が出ています。
しかし、時代とともにこれらの状況も変化しています、そう遠くない将来には格差が解消されていくのではないかと私は考えています。
ただ、現状を鑑みるに、少なからず年金制度での男女格差は存在する以上、それらを正しく理解し、各個人の責任でそれぞれのご家庭にあった形で老後生活への備えをする必要があるでしょう。