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2.52020
障害年金の基礎知識② 〜初診日〜
目 次
最も重要な「初診日の特定」
障害年金を受給するためには3つの要件が必要であると説明しました。(障害年金の基礎知識①より)
その3要件のうち最も重要なのは、ズバリ「初診日」だと言えます。では、何故初診日が最も重要なのでしょうか?
もう一度、障害年金を受給するための3要件を復習します。
①初診日要件
・初診日に国民年金又は厚生年金の被保険者であったこと
②障害認定日
・障害認定日(原則として初診日から1年6か月経過した日)に一定の障害の状態にあること
③納付要件
・初診日を起点として、初診日の属する月の2か月前までの一定期間に別途定める納付要件を満たしていること
つまり、3要件とも、その要件を満たすためには「初診日」が明らかである必要があることがわかります。
従って、まず初診日が特定できなければ、その先に一切進むことができないのです。
ではここまで、初診日、初診日と、専門用語を当たり前のように使用してきましたが、次に初診日の正確な意味を説明します。
初診日とは
初診日とは、障害の原因となった傷病につき、はじめて医師又は歯科医師の診察を受けた日の事を言います。また、同一の病気や怪我で転院をした場合は、一番はじめに医師又は歯科医師の診療を受けた日が初診日となります。 |
上記の通り、初診日とは医師等の診察を受けた日の事を言うのであって、その傷病の発生した日のことではありません。従って、仮に傷病が発したとしても、病院で医師の診察を受けていなければ、その状態では初診日が無いことになります。障害年金を受給するためには、原則として初診日を特定する必要があります(20歳前障害を除く)、よって障害年金の請求をご検討の方は、初診日がいつなのかまず一番に特定するようにしてください。
初診日の持つ重要な意味
初診日は、障害年金の請求において次のような重要な意味を持っています。
①初診日に加入している年金制度によって、受給することができる年金種別が決定する。
②保険料納付要件は、初診日の前日時点において一定の要件を満たすことが求められる。
③障害認定の起点日が初診日である、原則として初診日から1年6か月経過日が障害認定日となる。
初診日の具体的事例
次に、初診日とされる具体的な事例を紹介します。
①はじめて医師による診療を受けた日(治療行為または療養に関する指示があった日)
→この場合、医師は必ずしもその傷病に関する専門委や診療科目では無くても良いとされています。
②同一の傷病で転医があった場合は、一番はじめに医師等の診療を受けた日
③過去の傷病が治癒し、同一の傷病で再度発症している場合は、再度発症し医師等の診療を受けた日
④過去の傷病が社会的治癒したと認められる場合であって、同一の傷病で再度発症している場合は、再度発症し医師等の診療を受けた日
→③④に関し、旧傷病が治癒した後に再発した場合は、再発として過去の傷病とは別傷病と扱われますが、治癒したと認められない場合は、旧傷病が継続しているとされます。
⑤傷病名が確定せず、障害年金申請時と初診時の傷病名が相違して違う傷病名であったとしても、それが同一の傷病と判断される場合、初診時の傷病名での初診日が障害年金対象傷病の初診日となる
⑥じん肺症(じん肺結核を含む)については、じん肺と診断された日
⑦障害の原因となった傷病の前に、当該傷病と相当因果関係があると認められる傷病がある時は、最初の傷病の初診日が障害年金対象傷病の初診日となる。
⑧先天性の知的障害(精神遅滞)の場合、初診日は出生日
⑨広範性発達障害(アスペルガー症候群、自閉症など)では、自覚症状があって初めて医師の診断を受けた日
→発達障害は、通常20歳前に発症する疾患と考えられますが、はじめて受診した日が20歳以降であった場合は、当該受診日を初診日とされます。
⑩先天性疾患、網膜色素変性症などは、具体的な症状が出現し、はじめて医師の診断を受けた日
⑪先天性股関節脱臼は、完全脱臼したまま生育した場合は出生日が初診日となり、青年期以降になって変形性股関節症が発症した場合は、発症後にはじめて受診した日
⑫健康診断により以上が発見され、療養に関する指示があった場合は、健康診断日が初診日とされる
→ただし、経過観察と言われた場合は、初診日とはならないものの、旧厚生年金の「発病日」とは扱われます。
⑬精神疾患などについては、その前駆症状で受診したときは、その日を初診日とする
→精神疾患の場合、内科や小児科、耳鼻咽喉科など他科目で受診したものであっても、その症状が精神疾患の前駆症状だと判断されれば、その日が初診日となります。
⑭誤診の場合、正確な傷病名が確定した時が初診日ではなく、最初に誤診であった医師等の診療を受けた日
初診日を証明する資料
前述の事例などを参考に、初診日を確定することはできたとしても、いざ障害年金の請求をするためには、初診日を証明するための添付資料を用意しなければなりません。証明するために要求される資料は次の通りです。
①診断書
初診日と障害認定日(初診日から1年6か月後)での病院が同一である場合は、診断書をもって初診日を証明する資料とすることができます。
②受診状況等証明書
初診日と障害認定日(初診日から1年6か月後)での病院が相違する場合は、初診日のある病院に受診状況等証明書を記入してもらう必要があります。初診時の病院が存在し、当時のカルテが残っている場合などはこの方法が可能でしょう。しかし、初診時の病院が既に廃院されていたり、当時のカルテが既に廃棄されて診療記録の確認ができない場合などでは、次の方法を探ることとなります。
③受診状況等証明書を添付できない申立書+別途客観証明資料
上記の通り、初診時の病院から受診状況等証明書をとることができない場合は、その理由書に初診日を客観的に証明することができるその他資料を添付して間接的に初診日を証明することとなります。
客観的に初診日を証明する資料の一例をご紹介します。
①身体障がい者手帳等
②身体障が者手帳の申請時に添付した診断書
③生命保険など給付時に添付した診断書
④健康診断記録
⑤お薬手帳、医療機関の診察券(受診記録)、医療機関の領収書など
⑥第三者による証明
~その③に続く~