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10.182019
相続の手引き13_遺産分割について
目 次
遺産分割はなぜ必要なのか
相続人が複数いる場合、遺産分割がいつまでも行われないと、相続財産はどのような状態に置かれると思いますか?
民法898条には次の通り規定されています。
(共同相続の効力)第八百九十八条 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。 |
つまり、遺産分割が行われるまでは、相続財産は相続人全員の共有となります。
共有でも構わないとお考えの方も多いと思いますが、共有財産になることで生じる、様々なデメリットをいくつか紹介します。
共有財産のデメリット
財産活用には共有者の同意が原則
土地の所有権が単独であれば、処分しようが、賃貸しようが、土地に建物を建てようが、
すべて所有者の一存ですることができますが、共有の場合はそうは行きません。
例えば土地の処分(変更行為といいます)をするには、共有者全員の同意が必要となりますし、
土地の賃貸(管理行為といいます)をするには、共有持分価格の過半数の同意が必要です。
このように、共有財産に関する意思決定は、自分ひとりでできない場合が多く、
共有者間で意見が揃わない場合にトラブルの原因となります。
民法251条、252条に規定される共有物の運用ルールを図表で示します。
権利関係の複雑化
相続人が兄弟姉妹など、気心が知れている近い関係の者同士なら、共有財産のままでも支障は無いかもしれません。
いざとなればみんなで話し合って運用方針を決めることも容易でしょう。
しかし共有のままで放置した結果、共有者が死亡して次の相続が発生した場合、共有者が急に増えることになります。
持ち分も細分化され、一気に運用方針の決定が難しくなるでしょう。
相続財産の土地を処分する場合、それは変更行為に当たり、共有者全員の同意が必要です。
いざと言うときに共有者が増えすぎて、連絡のつかない共有者や、生死不明の共有者がいた場合、
その共有者の同意を取るための手続きはとても大変なものとなります。
そのためにも、相続財産の共有状態は早期に解消するべきなのです。
参考:相続の手引き6_相続人の確定作業>遺産分割協議が行えない場合
物はひとつ、誰が使うのか
共有財産であれば、各共有者はその持ち分に応じて共有物の全部について使用収益することができるとされています。
(民法249条)
では実際問題、共有不動産をある共有者が一人で使用し続けた場合、ほかの共有者はどう思うでしょうか?
使用することもできないのに所有権(持ち分)はあるわけです、固定資産税負担もあるでしょう。
使用できない共有者の中には、きっと面白くないと思う人も出てくると思います。
物件ひとつに所有者が複数存在するという事は、このように不都合なことが多々発生するのです。
遺産分割の対象となる財産の範囲
一言で遺産分割と言っても、そもそもすべての財産が相続財産ではありませんし、相続財産であっても遺産分割の対象とならないものもあります。
遺産分割の方法
被相続人が遺言を残していない場合、相続人全員で遺産分割を協議することになります。
遺産分割協議をするためには、相続人全員で遺産分割の内容を協議し、その結果を遺産分割協議書に記載し、
相続人全員が署名押印(実印)することが必要です。
なお、遺言書があった場合でも、その内容に相続人全員が反対し相続人全員の同意があれば、遺言書の内容に反する遺産分割協議をすることは可能です。
※遺産分割協議書に関する詳細は別の機会にします。
遺産分割の方法は次とおり4通りあります。相続人全員が納得した方法であれば、どの方法でも構いません。
現物分割
不動産、預貯金、株式など、相続財産を現物そのままで相続人に分ける方法です。
代償分割
特定の相続人が相続財産を取得します。
他の相続人には、財産を取得した相続人から、相続分に相当する金銭等(代償金)が交付されます。
換価分割
不動産や株式など、相続分どおりの分割に適さない財産を売却し、換価(現金化)したうえで、
相続分に応じて現金で分配する方法です。
共有分割
一つの財産を複数の相続人で共有する方法ですが、前述のとおり、財産共有のデメリットもあり、極力避けることが望ましいです。
争わないための遺産分割協議を
遺産分割協議がまとまれば、相続財産の所有権移転が可能となり、相続手続きが一応完了することとなります。
ただし、相続人間で遺産分割協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に対して遺産分割調停を申し立てすることができます。
調停でもまとまらない場合は、遺産分割審判に移行することになります。
遺産分割審判になると、結果として「法定相続分での遺産分割」にならざるを得ません。
まとまらなかった相続人間にも、しこりが残ることでしょう。
そうならないためにも、遺産分割協議でしっかり話し合ってまとめることがとても大事です。